2022.01.27

カーボンニュートラルとは?製造業が取り組むべき理由と海外事例を紹介します

カーボンニュートラルとは?製造業が取り組むべき理由と海外事例を紹介します

近年耳にする機会の増えた「カーボンニュートラル」。特に自動車製造に携わる方であれば、取り組みを検討されている方も少なくないのではないでしょうか。

SDGsなど、環境保全への関心が高まるなか、カーボンニュートラル製品の需要は高まっています。

本記事では、カーボンニュートラルの概要やなぜ取り組む必要があるのか、また海外での取り組みについても解説します。

TEXT BY Leaner Magazine編集部

             

カーボンニュートラルとは?

カーボンニュートラルの概要

カーボンニュートラルとは、「温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること」です。具体的には、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの「排出量」から、植林、森林管理などによる「吸収量」を差し引いて、合計を実質的にゼロにすることを意味しています。

2015年に気候変動問題の解決に向けて採択されたパリ協定では、以下の2つを始めとする世界共通の長期目標が合意されました。

  • “世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求すること(2℃目標)”
  • “今世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡を達成すること”

この目標の実現に向け、世界中の国々が「2050年カーボンニュートラル」という目標を掲げています。

日本政府も、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」を目指すことを宣言しています。これを実現するためには、温室効果ガスの排出量削減と吸収作用の保全及び強化をする必要があります。

          

カーボンニュートラルの重要性

昨今、地球温暖化の影響で世界では様々な気象災害が発生しており、日本においても、農林水産業、水資源、自然生態系、自然災害、健康、産業・経済活動等への影響が出ると指摘されています。

カーボンニュートラルは、激しい気候変動を緩和し、持続可能な経済社会をつくるため、政府や企業、個人といったあらゆる主体が取り組む必要があります。

そのため、現時点で活用可能な技術を最大限活用し、すぐに取り組みを始めることが重要です。

世界でも脱炭素に向けた取り組みは行われており、欧州委員会は2050年までにカーボンニ ュートラルを目指す「欧州グリーンディール」を発表、2020年9月には世界最大の排出国である中国も、習近平主席が「2060年より前の排出量実質ゼロ」を表明しました。

アメリカは、パリ協定への再参加を表明するとともに2050年までのカーボンニュートラルに向けて政権全体で対策に取り組むと表明し、以下の政策目標を掲げています。

  • “2025 年までに、小型車におけるゼロエミッション車(ZeroEmission Vehicle/ZEV)とプラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle/PHEV)の新車販売台数を 150 万台以上にする
  •  “2030 年までに、小型車における ZEV と PHEV の新車販売台数 を 420 万台以上にする。アドバンスト・クリーンカーズ(Advanced Clean Cars)で規定している小型車のGHG 排出規制を強化する

そのため、日本企業が海外で製品販売を競争力を保つ観点からも、カーボンニュートラルに対応しなければなりません。

参考:脱炭素ポータル

参考:JETRO : 米国・カリフォルニア州の 気候変動対策と産業・企業の対応

             

製造業にとってのカーボンニュートラル

環境省の「2019年度(令和元年度)の温室効果ガス排出量(速報値)について」によると、全産業における製造業のCO2排出量の割合は約35%でした。そのため、製造業全体でカーボンニュートラルに取り組むことが求められます。

製造業のカーボンニュートラルへの取り組みは主に以下の3つです。

  • エネルギー源の切り替え
  • 製造工程における技術開発や新技術の活用
  • 持続可能な物流管理の実施

また、環境省からのサポートや融資条件の優遇にも関係するため、早いうちからカーボンニュートラルに取り組むことが望ましいでしょう。

              

日本・海外それぞれの企業の取り組み

前章でも述べたように、近年、地球温暖化への対応としてカーボンニュートラルを目指す動きが世界的に加速しています。

カーボンニュートラルを目指す運動において、日本は原子力で電力を賄おうとする計画が東日本大震災を契機に困難となり、火力発電に依存するようになったこと、また再生エネルギーの普及率が低いことから、他国に比べて遅れをとっています。

本章では、世界各国と日本における企業の対応をご紹介します。

日本企業の対応

愛知製鉄

愛知製鉄は、2030年までにステンレス形鋼を生産する主力の刈谷工場(愛知県刈谷市)でカーボンニュートラルを目指しています。

全社で2030年までにCO2排出量を35%削減(2013年度比)する方針で、一部エネルギー源として使う重油を天然ガスに切り替え、太陽光発電設備を導入するほか、水素関連での新技術開発などを加速し、達成の前倒しも狙います。

また、同社は2050年までに全社でのカーボンニュートラルを目標に掲げ、刈谷工場での取り組みで技術やノウハウを蓄積して、他工場にも展開する狙いです。

参考:newswitch : 水素関連の新技術開発を加速するトヨタ系部品メーカー、社長の意気込み

デンソー

デンソーは、パリ協定で定められた目標よりも更に早い段階での達成を目指し、「2035年までに事業活動でのカーボンニュートラルを目指す」と宣言しています。従来からのモビリティ製品やモノづくり、そして新たにエネルギーを利用する領域で、さまざまな取り組みが進んでいます。その中でも、工場の生産工程で発生する排気ガスからCO2を回収し、そこに水素(H2)を結合させてメタンガス(CH4)を合成する施設である「CO2循環プラント」の開発プロジェクトに力を入れているそうです。

参考:DENSO : CO2を出さないモノづくりなんて、   あたりまえでしょ?  そんな未来のための挑戦

             

海外企業の対応

ダイムラー 

ドイツの代表的な自動車メーカーであるダイムラーと関連会社は、燃料電池自動車の開発に取り組んでいます。2020年9月にダイムラー・トラックから発表された大型FCVトラックは、カーボンニュートラル実現に向けた製品の1つです。

ダイムラー・トラックの大型FCVトラックは長距離輸送が可能な燃料電池自動車で、1,000キロメートル以上の走行に向いています。2023年にテスト走行が始まり、2020年代の後半には量産が開始される予定です。

参考:脱炭素チャンネル : カーボンニュートラルとは?目的や取り組み、企業事例も含めて解説!

MIICHELIN 

フランスの多国籍タイヤ製造企業であるミシュランは、2014年以降、バリューチェーン全体を考慮したスコープ3基準による温室効果ガスの排出量を算定して情報開示し、再生可能エネルギーの導入のほか、持続可能な物流チェーンの構築に力を入れています。トラック輸送から鉄道、河川、海洋輸送へのモーダルシフト、排出量削減に重点を置いた在庫やロケーション管理システムの導入、トラック輸送の効率化(積載効率の改善)などを通じ、輸送に関わる排出量の削減を目指します。

また、航空機の利用を最小限に抑えるため、運送業者と常にマルチモーダルソリューションの策定を検討しているそうです。エネルギー効率を重視する輸送業者をパートナーとして優先し、提携業者にはトラックのエネルギー効率の改善を支援する制度を設けています。さらに、エネルギー消費の10%削減につながるとしている、運転技術の向上に向けた職業訓練にも力を入れています。さらに、ミシュランは水素モビリティの開発・普及も推進しています。

参考:JETRO : 大企業を中心にカーボンニュートラルへの貢献が加速(フランス)

             

調達・購買担当として取り組むべきこと

調達・購買担当者は、仕入れ先企業が環境へ配慮した製品製造を行っているか、注意することが必要でしょう。例えば、各サプライヤーに対して実地調査やアンケートをとり、「環境への配慮」という評価項目をもうけ、基準をクリアした企業のみを選定する、などが考えられます。これらの取り組みを通じてグリーン調達を実現するとで、持続可能なサプライチェーンを構築を目指しましょう。

参考記事:​​グリーン調達・グリーン購入とは?意味や手順、CSR調達との違い、成功事例まで紹介

例えば、電気会社と契約する際、「非化石証書」を活用する方法があります。「非化石証書」とは、石油や石炭などの化石燃料を使っていない「非化石電源(電気をつくる方法)」で発電された電気が持つ「非化石価値」を取り出し、証書にして売買する制度です。

参考:経済産業省  : 「非化石証書」を利用して、自社のCO2削減に役立てる先進企業

また、これらの取り組みに加えて、調達・購買部門の情報収集力や、サプライヤーとのパートナーシップを強化することがますます重要となるでしょう。

                  

最後に

本記事では、カーボンニュートラルの意味や重要性、海外企業の取り組み状況や調達・購買部門が行うべきことをご紹介しました。

カーボンニュートラルは、今後更に注目されることが予測されるため、早めに取り組むことが望ましいでしょう。

本記事が、カーボンニュートラルに取り組もうと考える製造業の方々のお役に立てれば幸いです。

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