2021.10.18
電子帳簿保存法の改正でどんな変化がある?調達・購買部門がすべきこととは
2022年1月から改正される「電子帳簿保存法」の内容について、皆様は正しく理解できていますか?
電子データの取り扱い方法について、よく理解できていない企業も少なくないと思います。
本記事では、電帳法改正に向けて調達・購買部門が行うべきことに重点を置き、そもそも電帳法とは何か、改正で何が変わるのかを解説します。
調達の責任者の方々、企業の調達に関わる全ての方々に役立つ記事となっています。ぜひご一読ください!
TEXT BY Leaner Magazine編集部
電子帳簿保存法とは?
電子帳簿保存法とは、各税法において原則紙での保存が義務づけられている帳簿書類について、一定の要件を満たしていれば電子データによる保存を可能とすること、また電子的な取引情報の保存義務等を定めた法律です。
帳簿書類は、「帳簿」と「書類」の2つに分けることができます。たとえば、「帳簿」であれば総勘定元帳、仕訳帳、売掛・買掛金元帳など、「書類」であれば貸借対照表、損益計算書、領収書、契約書などがあります。
電子データによる保存は、大きく「電子帳簿等保存 (電子的に作成した帳簿・ 書類をデータのまま保存)」、「スキャナ保存 (紙で受領・作成した書類を 画像データで保存)」、「電子取引 (電子的に授受した取引情報をデータで保存)」の3種類に区分されています。
以下の図を見るとわかりやすくなっています。
この法律は、経済活動のデジタル化が進む中で、経理業務を効率化し、社会のペーパーレス化を進めるために作られた法律です。
電子帳簿保存法の改正で何が変わる?
電帳法改正と調達・購買業務の関係は?
今回の電子帳簿保存法改正で、改正前には電子データを印刷して書面保存することが特例で認められていた部分が廃止され、電子取引を行っている国税関係書類(見積書、請求書、発注書等)は、授受した電子データのオリジナルを保存することが義務付けられました。
真実性の要件としてデータが訂正・削除できない状態での保存、可視性の要件として年月日・金額・取引先名での検索ができる状態での保存が必要です。
そのため、たとえば発注に至った見積書データが個人のメールボックスやPCのフォルダなどに散見している場合、メールやシステムを通じて取得した見積書データを書類に印刷して保管している場合、複合機のFAX機能で取得した見積書をタイムスタンプの処理を行わずに保管している場合などは、法律改正後の基準を満たしていないことになります。
ただし、紙の原本を紙のまま管理するのは引き続き認められています。
ここで、調達・購買部門の方に影響のある「電子取引」を重点的に、保存方法3種類それぞれの改正事項をご紹介します。
電子帳簿保存
電子帳簿保存に関しては、事業者の業務負担軽減のため、これまで必要とされた電子データ保存の事前税務署長の承認が不要とされます。
また、「優良な電子帳簿の要件」を満たして軽減措置を受ける旨の届出書を提出している場合、万が一申告漏れがあった際に過少申告加算税が5%軽減されるほか、モニター、説明書の備付けなど最低限の要件を満たす電子帳簿についても、電子データによる保存が可能になりました。
スキャナ保存
スキャナ保存では、電子帳簿保存と同様に税務署長の事前承認制度が廃止されます。
また、可視性の要件としてタイムスタンプ要件、検索要件等については、次のとおり緩和されます。
⑴ タイムスタンプの付与期間が、今までは7営業日だったものが、最長約2か月とされました。
⑵ 帳簿書類の受領者等がスキャナで読み取る際の自署が不要とされました。
⑶ 電子データについて訂正又は削除を行った場合に、クラウド等において入力期間内にその電子データの保存を行ったことを確認することができる場合、タイムスタンプの付与は不要です。
⑷ 検索要件の記録項目が「取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先」に限定されるとともに、税務調査に応じる際の「範囲指定及び項目を組み合わせて条件を設定できる機能」の確保が不要となりました。
その他にも、適正事務処理要件の廃止やスキャナ保存された電子データに関連した不正があった場合の重加算税が10%加重される措置が整備されました。
電子取引
1. タイムスタンプ要件及び検索要件について次のとおり要件が緩和
タイムスタンプの付与期間と検索項目について、タイムスタンプの付与期間が、今までは7営業日だったものが、最長約2か月とされ、検索要件の記録項目が「取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先」に限定されるとともに、税務調査に応じる際の「範囲指定及び項目を組み合わせて条件を設定できる機能」の確保が不要となりました。
また、基準期間の売上高が1,000万円以下である小規模な事業者について、税務調査の際に電子データのダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、検索要件の全てが不要とされました。
2. 適正な保存を担保する措置として、次の見直しが行われた
⑴ 電子データを印刷した紙を保存することが認められなくなり、オリジナルデータを保存しなければなくなりました。
⑵ 電子データに関して、不正があった場合には、その事実に関し生じた申告漏れ等に課される重加算税が10%加重されるようになりました。
電子データ保存3区分の変更は上述の通りになりますが、特に「電子取引」に関する条件が厳しくなったことが分かります。調達・購買部門はこの部分への対応が必要になります。
調達・購買部門への影響
国税関係書類の中で、発注書・請求書は管理できている企業もありますが、それに紐づく「見積書」については管理が属人化していることが少なくありません。
具体的には、以下のような方法で見積書を管理している企業は改正後の電子帳簿保存法の基準を満たしているとは言えない管理体制と言えます。
1. 見積書をメールでやり取りし、データがメールボックスや個人PCのフォルダなどに入ってて検索できない
2. メールやシステムを通じて貰った見積書データを、書類に印刷して保管してる
3. 複合機についてるFAX機能で取得した見積書を、タイムスタンプの処理を行わずに保管している
上記は一例ではありますが、詳しくは国税庁が出している「電子帳簿保存法一問一答」で確認して頂ければと思います。法改正への要件を満たしていない管理体制の場合、対応策を検討する必要があるでしょう。
法改正への対応策
電帳法改正への対応策としては、電子取引の条件に対応しているシステムを導入することが挙げられます。
具体的には、真実性要件、可視性要件を満たすものである必要があります。
クラウドサービスであれば、導入までの準備期間が必要なく、すぐに導入できるため、現場の社員の方々の業務を増やすこともありません。
新たにシステムを導入しない場合には、以下の方法があります。
1. FAXのタイムスタンプ機能を義務化する
2. 紙の書類をやりとりしている場合は、現状と同じくオリジナル書類を7年保管する
3. オリジナル電子データ(メールで受け取るPDFデータなど)の管理方法を社内で決め、運用ルールを徹底する
4. ファイル名に「取引先名_金額_年月日」などのルールを決めるなど、国税庁のQ&Aに書いてある管理方法を徹底する
しかし、1、2番はどちらも紙を管理するリスクが常にあります。
紙媒体での管理のリスクは主に以下になります。
・紙の保存には保存場所や設備が必要になるため、保存期間が長くなればなるほど保管コストが高くなる
・重要書類の場合、誰でも見ることができないように厳重な管理が必要で別途コストがかかる
・紛失した場合、一切の記録が消える可能性がある
・書類整理などの管理に労力がかかる
上述のように、システム導入しない場合の対応は総じて管理コストやデータの紛失リスクが高く、見積書を管理できるシステムを簡単に導入し仕組化することが、最も実務の軽減に役立ちます。
企業としてのリスク
この法改正に対応しない場合の企業のリスクはどのようなものがあるでしょうか?
法令違反のリスク
隠蔽した場合はもちろん、隠蔽したわけでなくとも法令違反を犯し悪質であると判断された場合には、以下のような罰則が科せられる可能性があります。
・通常課される重加算税の額にさらに該当申告漏れに対する税額の10%相当の金額が加算される
・青色申告の承認や連結納税の承認が取り消される
これらの罰則を科せられる以外にも、「青色申告の承認を取り消された」ことが企業の信頼性低下に繋がる、書類の保存が杜撰なことからその他の税法への違反も疑われ、厳しい調査徹底をされてしまうことが考えられます。
税務調査対応のリスク
上述した罰則以外にも、調達・購買部門への直接的な影響としては、税務署からの調査によって実務が止まってしまう可能性があります。特に、調達・購買は止めてしまうと生産計画に多大な影響が出る業務ですので、こちらのリスクも考慮に入れる必要があるでしょう。
万が一税務調査が行われた際に、法律の要件を満たしていない管理体制だった場合や、契約書や請求書、それに紐づく見積書が見つからなかった場合、更なる調査徹底を行われ、現場の担当者の業務が滞ってしまう可能性もあります。。
調達・購買部門で取り扱うことが多い見積書に関しては、「書類の保存義務を果たしていないこと」による直接的な罰則はありません。あくまで悪質な改ざんや税の申告漏れが発見された場合に罰則がありますが、税務調査のための対応で現場に負荷がかかることを想定すると、今のうちから現場に負荷をかけない管理体制を構築しておくのが無難と言えるでしょう。
終わりに
本記事では、電子帳簿保存法の概要から、改正内容、違反した場合の罰則と調達・購買部門がとるべき対応策までについてご紹介しました。
皆様の企業では2022年1月に向けて十分な準備ができていましたか?
できていない方は、今一度見積書の電子データの保存方法について考えてみてはいかがでしょうか。
本記事が、皆様のお役に立てれば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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