2020.11.12
相見積もりとは?意味やメリット、マナーなど交渉のポイントを解説
企業がモノ・サービスを購入する際、役立つのが「相見積もり」のプロセスです。皆さんは相見積もりの意味やメリット、マナーについて理解していますか?
ポイントを抑え、効果的に相見積もりを実践することで、コスト削減やガバナンス強化など様々なメリットを手にすることができます。しかし、いざ相見積もりを取ろうとしたとき、具体的なステップが分からないという人も少なくないようです。
相見積もりには、知っておくべきいくつかのポイントがあります。この機会に相見積もりのやり方をマスターしてみませんか?
TEXT BY Leaner Magazine編集部
相見積もりとは?用語の意味を解説
相見積もりとは、個人や企業がモノ・サービスを購入する際に「複数の業者に見積もりを取り、価格や条件を比較すること」です。
製品の購入や新たな取引先を決めるときに、1社から見積もりを取るだけでは、その条件が良いのかどうかを判断することは難しいでしょう。
より最適な条件で調達をするためには、複数のサプライヤーを比較することが重要です。
特に、事業活動を行うためにさまざまな物品やサービスを調達する必要がある企業にとって、相見積もりは不可欠なプロセスと言えるでしょう。
相見積もりをとるメリット
企業が相見積もりのプロセスを実施するメリットは、大きく3つあります。
自社にとって重要な製品要件が明確になり、最適なサービスを選択することができる
モノやサービスを調達する際のゴールとは、自社の利用目的に最も合った製品要件を満たす選択肢を選び、実際に活用することです。
その前提に立つと、相見積もりをとる最大のメリットはプロセスを通じて自社にとって重要な製品要件が明確になること、またそれによって最適なサービスを選択しやすくなることだと言えるでしょう。
相見積もりのプロセスは、まず自社内で発注条件を整理し、決定することからスタートします。利用目的を整理し、それに即した期限・スペック・仕様・価格といった選定条件を決めていくのです。
このプロセスを通じ、サプライヤーを選定する軸が明確になることは、調達を成功させるために不可欠と言ってよいでしょう。考えなしに感覚でベンダーを選定するのとは、業務に必要十分な製品・サービスを選ぶことができる度合いに、大きな差が生じます。
競売環境が醸成されることで価格が下がり、コスト削減効果が得られる
2つめのメリットは、適正な価格条件を引き出すことでコスト削減効果を得られることです。
相見積もりを取得することで、複数の選択肢から適正な価格を判断しやすくなります。またサプライヤーの競争環境を醸成することで、より踏み込んだ価格交渉を行いやすくなるでしょう。
「Harvard Kennedy Study」の調査によると、企業は6社以上の会社から相見積もりをとることで、最安価格での調達を実現しやすくなることがわかっています。
不適切な取引を防ぎ、ガバナンスの強化につながる
相見積もりプロセスをとることで不適切な取引を防ぎ、企業ガバナンスの強化につながることも大きなメリットでしょう。
大きな企業になればなるほど、調達量や調達先のサプライヤー数は増え、その管理プロセスは煩雑になります。グローバル企業では、現地サプライヤーとの取引も盛んに行われるでしょう。こうした状況下では、不適切な取引が行われるリスクも大きくなります。
特に古くから企業間・担当者間で互恵関係がある、あるいは癒着構造ができあがっている場合には、不正取引の温床となっていることも…
相見積もりを通じて複数のサプライヤーを比較検討し、明確な選定理由に基づいた意思決定をすることで、取引の妥当性を担保することができるのです。
相見積もりの注意点とは?抑えておきたいポイントとマナー
相見積もりのプロセスには、抑えておきたい4つのポイントがあります。
相見積もりをとることを事前にサプライヤーに伝える
相見積もりを取得する場合は、その旨を必ずサプライヤーに伝えるようにしましょう。
見積もりの作成・調整業務など、依頼先にも業務負荷をかけることになります。マナーとして、他のサプライヤーへも見積もり依頼を出している旨は伝えておいた方がよいでしょう。
また、これによってサプライヤー側も競争環境を意識することになり、特に価格面で踏み込んだ条件を提示されやすくなるかもしれません。
予算や要望、納期を明確に伝える
自社にとって最適な見積もりをもらうためにも、情報は明確に伝えるようにしましょう。
また相見積もりを取得するベンダー間で情報格差が出ないよう、一律な情報共有を徹底します。こうすることで、サプライヤーにとってフェアな条件でプロセスを進めることができます。
同じ条件で比較する
取得した見積もりは、スペックや仕様、価格など様々な条件を揃えて比較しましょう。
たとえば、購入後のサポート内容が全く異なるサービスを価格だけで比較し判断するのは適切ではありません。仮にそのサポートが、自社のユースケースで確実に利用するものであるなら、これを利用する前提で条件を揃え、比較検討するべきです。
6社以上に見積もりを出す
すでに紹介している通り、相見積もりの効果を最大化するためには、一定数以上のサプライヤに見積もり依頼をする必要があります。
「Harvard Kennedy Study」では、6社以上に見積もり依頼を出すべきだと結論づけています。
相見積もりの正しい取り方を7つのステップで解説
相見積もりを取ることで自社に最適な契約先を見つけ、最安価格での購買を実現するためには、以下の7つのステップが必要になります。
自社内で発注条件を整理・決定
まずは、自社内で「モノ・サービスを購入する目的はなにか」「現在どのような問題があり、新たな調達先を探しているのか」「具体的にどのような機能が必要なのか」など、現在の契約状況や改善点を整理します。この情報をもとに、サプライヤーに提示する発注条件を決定していきます。
選定条件を決定
発注条件を決定したら、次は品質、価格、納期など、何を契約先の選定条件にするかを決めていきます。目的を達成するため、また現在の問題を解決するために必要な条件を漏れなく整理しましょう。
見積もりを依頼するサプライヤーを決定
見積もりを依頼するサプライヤーを決定します。自社に最適な契約先を見つけるためにも、見積もり先は一定数以上の企業をリストアップする必要があります。
見積もりを依頼するサプライヤーは、インターネット検索や、知人・専門家にヒアリングを行うことで、情報収集しましょう。モノ・サービスによっては、ベンダー比較サイトや解説記事が存在することもあるので、参考にするとよいでしょう。
また、携帯電話のように「大手キャリア」「MVNO※1」「MNO※2」など類似の事業形態がある場合は、それぞれの事業者に対して漏れなく見積もりを出せるように準備しましょう。
※1 MVNO:格安SIMの提供会社のこと
※2 MNO:通信回線を持っている通信事業者のこと
見積もりを取る
現在の契約先と新規サプライヤーのそれぞれに発注条件を伝え、正式な見積もり依頼(RFP)を出します。
適正価格を引き出すため、可能であれば6社以上のサプライヤーを目標に、見積もりを取得するとよいでしょう。
交渉する
相見積もりの結果が出たら、さらに料金を下げられないか価格交渉を行いましょう。
価格交渉については、以下の記事にくわしくまとめていますのでぜひご覧ください。
また見積もりの取得方法として、提出されている条件よりもさらに安価な条件を引き出すために「ブラインド見積もり」と呼ばれるテクニックが用いられることがあります。
ブランド見積もりとは、すでに見積もりを取得している企業に対して、自社の社名を伏せ仕様等の要望のみを伝えることで追加の見積もりを取得することです。
これにより、社名とそれに紐づく会社情報を前提としない価格条件が改めて提示されることになります。場合によっては、通常の見積もりより安価な条件が提示されることもあるので、あと一押しの交渉で活用するのがおすすめです。
評価する
交渉の結果や、製品のスペックを踏まえサプライヤーを評価し、どのサプライヤーが自社に最も適しているのかを選定します。
サプライヤーの選定軸と、見積もりをとったサプライヤー一覧を並べた比較表を作成し、判断することが一般的です。
契約先を決定する
最後に、契約先を決定しましょう。
また相見積もりの結果、断ることになったサプライヤーには早急に断りの連絡を入れましょう。見積もりの提示や交渉など、プロセスを通じてサプライヤーにも負担をかけていることを忘れてはいけません。お断りの連絡を入れる際は、必ず感謝の旨を伝えるようにしましょう。
相見積もりは戦略的に
相見積もりの意味やメリット、ポイントや具体的なステップについてご理解いただけましたか?サプライヤー側も時間を割いてくれていることを忘れず、マナーを守って取り組むようにしましょう。
また繰り返しになりますが、モノやサービスを調達する際のゴールは「自社の利用目的に最も合った製品要件を満たす選択肢を選び、実際に活用すること」です。相見積もりはこれを実現するための手段に過ぎません。
このことを今一度確認し、本記事の内容を実践いただければ幸いです。
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