2021.11.30

オンプレミスとクラウドの違いとは?導入企業数の日米徹底比較も交えてご紹介

オンプレミスとクラウドの違いとは?導入企業数の日米徹底比較も交えてご紹介

皆さんは、「オンプレミス」と「クラウド」の違いを正しく理解できていますか?「大まかな違いは理解できているが、それぞれのメリット・デメリットはうまく説明できない」という方も多いのではないでしょうか。

コロナ禍でテレワークが進み、多くの企業がDXへの関心を高めていますが、DXの進め方がわからない企業も少なくありません。

本記事では、オンプレミスとクラウドの違い、欠点と利点、米国企業のクラウド利用の現状について解説します。

TEXT BY Leaner Magazine編集部

               

オンプレミスとクラウドの違い

オンプレミスとは、システムの稼働やインフラの構築に必要となるサーバーやネットワーク機器、あるいはソフトウェアなどを自社で保有し運用するシステムの利用形態のことです。

反対に、クラウドとは、「クラウドコンピューティング(Cloud Computing)」を略した呼び方で、データやアプリケーション等のコンピューター資源をネットワーク経由で利用する仕組みのことです。

たとえば、今やスマートフォンや携帯電話を使って、メールをやり取りしたりゲームをしたりすることは当たり前になっています。

しかし、これらのアプリケーションは、スマートフォンや携帯電話上だけで動作しているのではありません。ネットワークでつながるデータセンターと呼ぶ大規模施設に置かれたサーバーやストレージ、各種のソフトウェアなどと連携することで、電子メールやゲームといった“サービス”が実現されています。ネットワークにつながったPCやスマートフォン、携帯電話などにサービスを提供しているコンピューター環境がクラウドです。

クラウドが提供するサービスは、その構成要素から大きく以下の3種類があります。

・IaaS(Infrastructure as a Service : イアース)

IaaSはシステムの構築と稼動に必要なインフラを、インターネット経由のサービスとして提供する形態のことです。IaaSはPaaSの発展系ともされます。IaaSのメリットはベンダーが提供するシステムをネットワーク越しに利用することが可能な点です。例として、Google Compute Engine、Microsoft Azureの仮想マシンや、Amazon Elastic Compute Cloud(EC2)が挙げられます。

・PaaS(Platform as a Service : パース)

PaaSは、クラウドにあるプラットフォーム一式をインターネット経由のサービスとして提供する形態のことです。PaaSは、大規模なデータセンターにプラットフォームを用意し、ユーザーがそのプラットフォームでサービス開発を行います。例として、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform(GCP) が挙げられます。

・SaaS(Software as a Service : サース)

SaaSは、従来パッケージで提供されていたソフトウェアを、クラウドとしてインターネット経由のサービスとして提供・利用する形態のことです。アカウントを保持していれば即時に利用可能で、グループやチームでもデータを共有し、あらゆる端末から利用可能です。例として、Zoom、Microsoft Office 365、Slackなどが挙げられます。

参考:オンプレミスとは

参考:総務省 クラウドとは

               

オンプレミスのメリット・デメリット

オンプレミスのメリットは、主に2つあります。

1つ目は「セキュリティ面の安全性の高さ」です。

オンプレミスは自社でシステムを運用するので、セキュリティ対策に力を入れていればサイバー攻撃を防げる可能性が高くなります。

2つ目は「カスタマイズの自由度の高さ」です。

自社で運営するため、自社に必要な機能を備えたシステムを自由に構築できます。

反対に、デメリットは主に4つあります。

1つ目は、「初期費用と運用コストの高さ」です。

オンプレミスはまとまった初期費用が必要になるうえ、日々メンテナンス、バックアップ、セキュリティ対策などの運用コストがかかり、金額は決して低くありません。

2つ目は、「導入期間の長さ」です。

システムの稼働やインフラの構築に必要となるサーバーやネットワーク機器、ソフトウェアなどを自社で開発する必要があるため、使用開始可能になるまで時間がかかります。

3つ目は、「管理の手間」です。

自社内でシステムを保有しているため、管理も自社で行う必要があります。

最後は、「トラブル発生時の責任は全て自社」です。

自社内のサーバーで運営しているため、何かトラブルが発生した際には自社で全責任を負う必要があります。場合によっては、多大な時間と費用が必要になることもあるでしょう。

      

クラウドのメリット・デメリット

クラウドのメリットは、主に2つあります。

1つ目は、「コストが安い」です。

クラウドは、一般的に外部ベンダーが作成したシステムを契約するため、自社で開発や環境整備をする必要がなく、初期費用がありません。また、メンテナンスやバックアップなどもベンダーが行うので、運営費用もかかりません。利用料のみで、オンプレミスよりも安価に使用することができます。

2つ目は、「即時導入可能」です。

クラウドは契約したらすぐに使えるようになるので、長期の導入期間がかかりません。

クラウドのデメリットは、主に2つあります。

1つ目は、「カスタマイズの自由度が低い」です。

クラウドはカスタマイズの自由度が低いため、自社に必要な機能が使えない可能性があります。

2つ目は、「セキュリティ面で万が一のことがあった場合ベンダーが責任を負うことは少ないこと」です。

クラウドはベンダーとの利用規約を交わしており、自社でシステムを直接管理できないため、情報漏洩など、セキュリティ面で問題が発生した場合に、ベンダー側が責任を負うことは少なくなります。

以上のように、オンプレミスとクラウドを比較すると、「初期費用や運営費用がかからない」「すぐに使用できる」というメリットから、クラウドの方が取り組みやすいと言えます。そのため、昨今は多くの企業でクラウドが検討・導入されています。

また、​オンプレミスで委託開発を行うと、依頼先の外部ベンダーしかシステムの仕様が分からず、新たなサービスを利用したい際に他社製品への切り替えが困難になる「ベンダーロックイン」の状態に陥るリスクがあります。

そのため、下図のように複数のクラウドサービスのメリットを活かしたシステム設計を行う「Best of Breed」の発想で、自社に必要な機能を備えたシステムを利用することが望ましいでしょう。

            

欧米企業と日本企業のクラウド普及率比較

Gartner, Incの最新の予測によると、IaaS(Infrastructure as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、SaaS(Software as a Service)の世界的な支出は、2020年には2,084億ドル(約23兆7000億円)で、2021年には合計2,641億ドル(約30兆600億円)、2023年には323,702億ドル(約36兆8000億円)になると予測されています。

参考:Gartner Forecasts Worldwide Public Cloud End-User Spending to Grow 23% in 2021

日本では、2018年には80億ドル(約9132億4,200万円)、2020年には110億ドル(約1兆2,557億776万円)、2023年の180億ドル(約2兆548億円)程度になると予想されています。

参考:Japan’s Market Report

中でも、SaaS普及率は世界で49%、日本で39%と、クラウドの中で最も普及しており、SaaS利用率は増え続けているため、本章では、クラウドが提供するサービス形態の中でも「SaaS」についてご紹介します。

               

1社あたりSaaS利用数の日米比較

株式会社メタップスが500名の社内IT担当者を対象に「SaaSの利用実態調査」のアンケート調査を行った結果、2020年の日本企業の平均SaaSの利用数は、8.7個でした。一方で、米国企業の2020年の平均SaaS利用数は80個であり、2021年には110個になっています。

そのため、5年前の米国SaaS平均利用数と現在の日本国内で利用されているSaaS利用数が同等となっており、日本はSaaS利用において遅れていると言えます。

参考:「コロナ期のSaaS導入変化でふり返る2020年」 SaaS利用実態調査レポート

               

日本の労働生産性が低いのはオンプレミス利用が原因?

日本生産性本部の「労働生産性の国際比較 2020」によると、日本の時間当たり労働生産性は、47.9ドルでOECD加盟37カ国中21位であり、主要先進7カ国でみると、データが取得可能な1970年以降、最下位の状況が続いています。また、日本の1人当たり労働生産性は、81,183 ドルでOECD 加盟37カ国中26位、日本の製造業の労働生産性は、98,795 ドル。OECDに加盟する主要31カ国中16位となっています。 

人口の減少が課題となっている先進国にとって、労働生産性の向上は喫緊の課題です。そのため、生産性向上に役立つ無形資産の活用は、労働集約的なサービス産業において重要です。 日本ではSociety 5.0が政府によって推進されていますが、それを実現するためにも、より受託開発がメインのオンプレミスではなく、クラウドを用いた柔軟なシステム活用が求められるでしょう。

参考:労働生産性の国際比較2020

               

クラウド導入時の進め方

クラウド導入時に意識すべきことは、まずは「目的を明確にする」ことです。

現状、課題を感じている業務を明らかにし、「生産性を上げる」など目的を定義したうえで、クラウドを利用します。そのためにも、今何が困っていて何が大変なのか、まず現在の業務を棚卸する必要があります。

また、クラウドを利用した際、短期的にプラスの効果が出ない、使い辛くてかえって業務が煩雑化してしまうなどの可能性はあります。その際、目先の失敗をむやみに糾弾しないことが重要でしょう。クラウドのメリットはすぐに始められるところ。「使いながら自社の運用を合わせていく」スタンスが求められます。

次に、「自社の競争優位性に関わる部分だけ内製化して残す」ことも、検討すべきです。言い換えれば、オンプレミスとクラウドで利用する部分を明確に見極める必要があります。

クラウド導入で重要なことは、「手作業を減らして付加価値の高い業務に専念する」ことです。業務効率を改善することで、他のやるべきことに手がまわせるようになります。たとえば現在紙を使っている「作業」は、競争優位を生み出すことにはつながりにくいでしょう。本来人間がやらなくてもいい単純作業はシステムに任せ、人間が介在するべき付加価値の高い業務に集中できる環境を作ることが、クラウド利用の本質ではないでしょうか。

たとえば、UNIQLO Payなどは、ビジネスモデル上の競争優位性があり、オンプレミスで取り組むべきIT投資といえます。

オンプレミスもクラウドも、「付加価値の高い活動に集中できるようにして経営インパクトを出せるようにすること」が最終的なゴールであることを意識して、導入を進めましょう。

               

おわりに

クラウドとオンプレミスは各社の状況に合ったものを使用することが重要です。

しかし、日本は米国と比較してクラウド利用が大きく遅れています。今まで積極的にクラウド導入を進めてこなかった企業では、この機会に一度クラウド導入を検討してみてはいかがでしょうか。

今回の記事を通じて、自社のシステム利用状況を見直し、クラウド導入を積極的に進められる機会にしていただけましたら幸いです。

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