2021.10.20

開発購買とは?上手くいかない原因から成功させるためのノウハウをご紹介

開発購買とは?上手くいかない原因から成功させるためのノウハウをご紹介

皆様の会社では「開発購買」を行っていますか?

開発購買は、戦略的な原価を設定し、企業の事業目標を達成するために非常に重要な活動です。

本記事では、「開発購買」の意味や進め方について詳しく解説します。製造業の調達・購買部門の方や現場で調達を行っている方に役立つ内容になっております。

ぜひご一読ください!

TEXT BY Leaner Magazine編集部

開発購買とは?

開発購買とは、簡単に言うと「新製品の開発段階から戦略的に購買活動を行うこと」です。

製造業において、調達・購買部門が製品開発の段階から購買活動を進め、開発から販売に至るまでの全プロセスにわたって必要な機能を最小のコストで獲得し、利益を最大化することを目的とする取り組みです。

通常の調達・購買活動がサプライヤーマネジメントなど、価格交渉がメインとなるコスト削減なのに対し、開発購買は開発段階からコストを抑えるために価格交渉だけでない部分でも社内外と連携していくことが必要です。

開発購買で重要になることは主に「社内外とのコミュニケーション」です。

開発から販売までの全体像を把握し、複数のサプライヤーとのやりとりはもちろん、開発部門や設計部門など社内の他部門との連携を行い、経営層に対しても提言をする必要があります。

具体的には、製品を構成する部品1つ1つの機能を分析・評価し、コストを最低限に抑える活動を行う、取引先の情報を分析し価格交渉を行う、製品に必要な部品や技術を有する国内外の新規取引先の開拓を行うことです。

調達・購買活動は一般的に以下のプロセスで行われます。

1. 企画

原価目標、売価目標を設定し、コストを最小限に抑えながら利益を最大化できるような購買企画を立てます。初期の見積をサプライヤーから集めたり、似たような部品の過去の見積価格を参照しながら、量産する場合に原価目標に届くような価格で仕入れができるかを、サプライヤーとやり取りをしながら確認します。

2.試作

原価の現状を把握し、実際の製造時の原価を想定するため、仮で製品を製造します。この際、企画時に出した目標原価と実際に製造した際の原価に乖離がある場合には乖離を調達・購買活動によって埋めます。

調達・購買活動におけるポイントは以下の記事でご確認ください。

参照:調達とは?意味や購買との違い、企業における調達の重要性やコスト削減に繋げるノウハウを紹介

3. 評価

販売後は、設定した原価目標、売価目標が達成できたのかを振り返り、評価します。目標が達成できていない場合には、原因となる問題点を突き止め、次回に活かせるよう改善策を立てることが重要です。

製造コストを抑えられるかどうかは上流段階、つまり企画・開発段階で決まると言われています。

そのため、開発購買は非常に重要な取り組みであり、コロナウイルスの世界的流行で売上を伸ばしにくい昨今では特に、調達・購買担当は開発購買に取り組みコストを最小限に抑えることが求められています。

         

開発購買の企業事例

トヨタ

トヨタでは、「利益の95%以上は原価企画で決まる」と言われています。

トヨタ自動車は1960年代から原価目標達成のため、製品・資材サービスのコストと機能を研究することにより図面や仕様書の変更、製造方法の能率化、発注先の変更などを行い、コストを低減する組織的な活動であるVE(Value Engineering)活動が活発化しています。

2011年からは、生産段階で全社VA(Value Analysis)活動をスタートし、2011年にはTMAP-EM(必要な機能を最小のコストで得ることを目的とするToyota Motor Asia Pacific Engineering & Manufacturing)に開発購買機能を設置するなど、開発購買に力を入れています。

参照:研究開発支援  原価企画・質量企画・部品標準化

     

日産自動車

新しい中期計画「Nissan M.O.V.E. to 2022」の中で挙げられている「安定的な利益率を目指すこと」を実現するため、コントロール&ファイナンス部門が原価管理を行い、収益性の高い車にすることを目指しています。会社の収益目標に対する現状の実績の把握と乖離分析を行い、関連する部署(企画・開発・購買)のみならず経営層に対して提言を行うこともあります。

また、ルノーや三菱自動車とのアライアンスを強化し、共同購買やサプライチェーン強化をグローバルで行うことで、新車種ローンチの際の原価低減を実現しています。

参考:日産自動車 IR情報

          

SONY

機構(メカ)・電気・半導体部品の開発から設計などの商品化上流プロセスを支える調達業務を行っています。

グローバルな調達戦略を策定し、取引先や部品の開拓、材料費の低減、品質の確保、安定調達の実現を目指しています。最適部品やサプライヤーを開拓・選定、業務の中で海外企業とやり取りも求められています。

参考:SONY 募集要項

        

Canon

調達部門は「商品企画-開発-生産」のものづくりのすべてのフェーズに技術的視点を持って関わり、材料・部品やそれらを構成する技術、また調達市場の動向を見極め、社外の技術をキヤノンのものづくりに結合する役割を担っています。

調達エンジニアは

・物(材料・部品/性能・品質)の見極め

・価値(機能/コスト)の見極め

・技術の目利き(横展開/融合)

をの3つを行い、技術的背景や技術的根拠をもとに調達業務に当たります。

一般的に、研究・商品開発には技術の深掘りがポイントであるのに対し、調達エンジニアには、社内と社外の技術をつなぐ幅広い技術の理解や技術の先読みの視点が求められます。

参考:調達エンジニア

   

上記のように、リーディングカンパニーは積極的に開発購買に取り組んでいます。

本章でご紹介した他にも、既に開発購買を取り入れ、製造コストを最小限に抑えて収益最大化に取り組んでいる企業は少なくありません。

       

開発購買が上手くいかない理由

開発購買がうまくいかない理由の多くは、

1. 日々の雑務が多すぎて、開発購買活動に十分な時間を割くことができない

2. 過去の見積データや交渉経緯が残っていないため、査定が困難である

ことによります。

1.日々の雑務が多すぎて、開発購買活動に十分な時間を割くことができない

日々の雑務は大きく以下の2つがあります。

1-1.他部門とのコミュニケーション

調達・購買部に購買依頼を上げてくる要求部門と仕様の確認などでコミュニケーションをとる際、コミュニケーション手段が紙の書類やメール、電話などアナログなため、簡単なやりとりや情報の管理に時間がかかります。

また、仕入品の納品確認を品質保証部門や要求部門と行ったり、サプライヤーから技術的な質問をされたときに生産技術部門に確認を取ったりと、多くのコミュニケーションコストがかかっています。

1-2.サプライヤーとのやりとりや進捗管理

サプライヤーとのやり取りをメールやFAX・電話などアナログな手段で行っているため、1社1社との連絡や、見積書送付の進捗管理などの管理業務が膨大なものになっています。

このため、見積書を回収するだけで手一杯で、厳密な価格査定を行うことが十分にできていないバイヤーも多いです。

また、各サプライヤーから返ってくる見積書のフォーマットもバラバラで、見積の比較資料を作るだけでも見積書に記載されているデータを自分でエクセルに転記することが必要です。日々何十件も見積を取る調達担当者からすると、このデータ入力だけでも膨大なものになるでしょう。

近年ではテレワーク化が社会全体で進んでいることもあり、リアルな場で仕事をすることが減ってきていることも、コミュニケーションコストの増加に拍車をかけています。

バイヤーが上記のような日々の業務に忙殺されているため、そもそも開発購買活動に時間を割けないという問題が多くの企業で起こっています。

      

2.過去の見積データや交渉経緯が残っていないため、査定が困難である

調達業務は細かな交渉ナレッジやサプライヤーとの関係構築、業界の動向など幅広い知識や経験が求められ、業務が属人化しがちです。過去の見積明細データやサプライヤーとの交渉経緯はベテランバイヤーの頭の中には存在していても、会社としてナレッジが蓄積できている企業は少ないです。

発注実績データだけではなく、そのサプライヤーに決定した理由や他のサプライヤーとの比較結果なども残しておかないと、査定は非常に困難になります。

また、開発部門や技術部門側にサプライヤーのナレッジが溜まってしまい、調達部門が「言われたモノを買うだけの部門」になってしまっている企業もあるでしょう。

このため、開発購買活動を行おうとしても、「経験豊富なバイヤーはできるが、新人や中途社員はスキルの向上にかなり時間がかかる」という状況になりがちです。

上記の状況を解決していかないと、開発購買を会社として取り組んでいくことが難しいでしょう。

       

開発購買を成功させるポイント

調達・購買部門は要求部門に依頼されたモノを買うだけでなく、開発段階から他部門やサプライヤーと関わっていくために、日々の雑務を減らす必要があります。

そのために有効なのが、調達・購買活動をDX化することです。

前の章で紹介したような雑務を減らす手段としては、クラウドサービス等のシステムを導入することが望ましいです。

開発購買を成功させるには、以下のステップを踏みましょう。

1. 経営陣が調達・購買の重要性を認識し、人とお金を投資する

現場のバイヤーだけでなく経営陣も調達・購買に対する理解を深め、調達・購買を「全社の課題」として捉えて取り組むことが重要です。経営陣は「工夫と努力で頑張れ」と言うだけではなく、調達活動をDXするための仕組みに投資したり、調達部門の活動を可視化し、適正に評価することが必要です。

2. 調達・購買部門の権限強化や開発・設計部門との連動、サプライヤーとの関係構築を強化する

開発購買においては調達・購買部門と他部門やサプライヤーなど、部門外との連携が成功するための重要なポイントになります。そのため、開発・設計部門とのコミュニケーションで必要な技術的知識を身に付け、企業の今後の展望やサプライヤーの選定、付き合い方など、購買活動に関わる全体像を把握し、常に改善しながら適切な調達・購買を行うことが求められます。

また、サプライヤーとの日々のコミュニケ―ション履歴や日々蓄積される情報を溜めておく仕組みを作ることが重要です。

3. 付加価値の高い活動を行える組織を構築する

ステップ2を実現するための始めの一歩として、クラウドサービスを活用することで日々の日々の雑務を極力減らし、付加価値の高い活動を行える組織を構築しましょう。

この際、大規模プロジェクトとして全社的な改革に取り組むのではなく、スモールスタートで行っていくことが肝心です。

プロジェクトに関わる人数が多くなればなるほど、話が進みづらくなりますし、社内の反対勢力により途中でプロジェクトが頓挫してしまう可能性もあります。(人間は誰しも現状の変化を嫌うものです)

       

クラウドサービスの良いところは、初期投資として自社でサーバーを構築したり、細かい要件定義が必要なく、利用料金だけ払えばすぐにスタートすることができるところです。

そのため、クラウドサービスを活用し、まずは1つの部門などの狭い範囲で取り組むことが重要です。小規模プロジェクトで成果が出てから、得たノウハウを基に全社に取り組みを広めていく方法が望ましいでしょう。

開発購買を成功させるうえで重要なことは、バイヤーの雑務を減らしながら開発購買活動に必要なデータを蓄積できる体制を構築することです。

つまり、全ての調達プロセスが可視化され、今までどのくらいの価格でやりとりをしてきたのか、それぞれのサプライヤーの特徴や選定理由は何なのかが一目で分かるようにすることが重要です。

開発購買を推進するために活用できるクラウドサービスとして、株式会社Leaner Technologiesが開発する「Leaner見積」というサービスがあります。

栗田工業やオリオンビールなどが活用しており、

・サプライヤーとの見積明細のやり取りや日々のメッセージのやり取りをクラウド上で行える

・過去の見積案件データが蓄積し、簡単に比較・検索ができる

・見積案件ごとの選定理由や社内の稟議資料もデータ蓄積することができ、調達力の強化が行える

上記のような特徴があります。気になる方は、ぜひサービスのお問い合わせをしてみてください。

■「Leaner見積」のHP

https://leaner.jp/procurement/

■「3分でわかるLeaner」資料ダウンロード

https://leaner.jp/ebooks/download03/

    

最後のまとめ

今回の記事では、製造業において調達・購買部門が上流工程から購買活動を行う「開発購買」についてご紹介しました。

記事前半では開発購買の意味や進め方、実際に取り組んでいる企業について解説しました。記事後半では、開発購買がうまくいかない理由や、成功のポイントについて解説しました。

今回の記事を通じて、皆さんが調達・購買部門のあり方を見直し、開発購買に取り組む機会にして頂けましたら幸いです。

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