2021.03.04

SDGs・サステナビリティとは?ESG・MDGs・PRI・地球サミットとの関係、企業の取り組み・目標をわかりやすく解説

SDGs・サステナビリティとは?ESG・MDGs・PRI・地球サミットとの関係、企業の取り組み・目標をわかりやすく解説

SDGs(持続可能な開発目標)やサステナビリティは企業の経営における重要課題であり、SDGsのバッジ・ピンバッジをつけてる方もよく見かけます。

この記事では、SDGsやサステナビリティをESGやMDGs・PRI、企業の取り組み事例を交えて紹介します。

また、経営で重視するべきSDGs・サステナビリティの要点・アクションプランをコーポレート・ガバナンスやエネルギー問題、サプライチェーンマネジメントの領域から解説します。

TEXT BY Leaner Magazine編集部

1. SDGsの概要

SDGsは「Sustainable Development Goals」の略称であり、日本語では「持続可能な開発目標」と呼ばれます。SDGsは、地球や人間社会をより良くしていくための取組みとして、国際連合にて2015年9月に採択された、世界共通の開発目標です。

元々、SDGsは単独で採択されたものではなく、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」という国連文書の中で打ち出されたコンセプトでした。

このコンセプトの詳細については、外務省より提供されている仮訳がありますので、ぜひご参照ください。
持続可能な開発のための2030アジェンダ(日本語訳)

SDGsの対象範囲は、食料やエネルギー、工業、ジェンダー、平和活動にいたるまで幅広い領域に言及されています。また「ゴール」という名の通り、SDGsには具体的な期間や定量的な目標が決められています。

まず、SDGsの「期間」について説明します。SDGsの達成に向けて国連が定めた期間は、2016年から2030年までの15年間です。

実はSDGs(持続可能な開発目標)には、その前身となる「MDGs(ミレニアム国際目標)」の存在が影響を与えています。MDGsは、2001年~2015年までの世界共通の開発目標として国連主導で推進されており、SDGsはその後の15年を対象期間としたものとして誕生しました。MDGsの概要については、後の章でくわしく紹介します。

次に、SDGsの「目標」について説明します。SDGsは17つの開発目標の集合体です。SDGsの前身であるMDGsは8つの目標を掲げていたのに対して、SDGsではさらに9つの領域で新たな開発目標が追加されました。

また、MDGsとSDGsは共に「目標」→「ターゲット」→「指標」の順に、内容が具体化されていきます。MDGsでは、8つの目標のもとに具体的な21のターゲットと60の指標が設定されていました。一方、SDGsでは、17つの目標のもとに具体的な69のターゲットと232の指標が設定されています。

SDGsの17つの目標は以下のようになります。

                             (外務省公式ホームページより)

SDGs自体の詳細や日本政府の取組みについては、以下の資料をご参照ください。
持続可能な開発目標と日本政府の取り組み

今回の記事では、SDGsのキーワードである「サステナビリティ(Sustainability)・持続可能性」についての問題意識・改善目標がどのような歴史や議論を経て、国際社会で形成されてきたのかを紐解きます。

そのうえで、SDGs・サステナビリティ(Sustainability)を企業経営の文脈に落とし込んだ際に、どのようなポイントを意識し、かつ注意するべきなのかを、ESG・エネルギー政策・サプライチェーンマネジメントを交えて紹介します。

    

サステナビリティ(Sustainability)とは

   

サステナビリティのスタート地点「環境保護」

皆さんは国際社会において、「環境保護」は各国政府の義務として位置付けられていることを知っていますか?サステナビリティを理解するために、まずは「環境保護」が国の政策課題になるに至った背景を紹介します。

第2次世界大戦が終わり、世界各地で戦後復興を掲げて、様々な工業や資源利用、貿易や都市開発が進みました。日本でも20世紀後半は、高度経済成長期を経て、社会が大きく発展しました。

しかし、そうした過程で世界各国が直面したのが、資源の枯渇や環境問題、公害問題でした。日本国内でも1960年頃から水俣病や四日市ぜんそくなど、急激な工業化の弊害である、とても痛ましい公害問題の数々と向き合わなければならなくなっていました。

またヨーロッパでは、大気汚染物質の移動によって、とりわけ北欧のスカンジナビア半島の森や湖が被害を受けていることがOECDの国際科学協力制作委員会の調査で明らかになりました。

ここで行動を起こしたのが、北欧で酸性雨の被害を最も被っていたスウェーデン王国でした。1972年、国連人間環境会議がストックホルムで開かれ、同年に採択された人間環境宣言(ストックホルム宣言)では、環境保護が各国政府の義務として定義づけられました。

このように環境保護が義務として定義づけられるまでに至った理由は、「環境保護」への取り組みが社会福祉や基本的人権の享受に影響するという認識が徐々に培われたからでした。

その世界的な気運は、日本政府の取り組みにも表れました。1960年代に数々の環境破壊とそれに付随する公害問題に直面したことで、日本政府は1971年に環境庁を設立するに至ったのです。

   

サステナビリティが各国政府の政策義務になった日

「サステナビリティ・持続可能性」の概念が、各国政府の首脳会議の場で語られ、世界的に普及するきっかけとなったのが、1992年ブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開かれた最初の地球サミットでした。

この地球サミットは、地球環境問題に人類社会が初めて取り組んだ 1972 年の国連人間環境会議から 20 周年を記念して開かれました。

「If you don’t know how to fix it. Please stop breaking it. (直し方のわからないものを、これ以上壊さないでください)」 

ブラジルの地球サミットで 12 歳の少女が世界に訴えた姿は、今でも環境保全やサステナビリティに関する報道番組や教科書で取り上げられています。今でも語り継がれるその演説を行ったのは、日系カナダ人のセヴァン・スズキでした。

自然豊かなカナダで過ごしていた彼女は、日々進行する環境破壊によって、自らの未来が脅かされることに危機感を抱き、はるばるカナダからブラジルの地にやってきました。演説の詳細については国連広報センターの以下の動画をご参照ください。
「国連環境開発会議」(地球サミット)におけるセヴァーン・スズキさん(カナダ)によるスピーチ(1992年6月、ブラジル、リオデジャネイロ

これまで各国首脳が膝をつめて議論していた場に若者を登場させるなど、画期的な要素がいくつも見受けられた第一回地球サミット。その議論の中身も画期的でした。

特にポイントとなるのは、「環境保護」という従来のテーマに「持続可能な開発」というサステナビリティを意識したテーマが加わった点でした。これによって、その後採択される様々な国際的な取り決め・条約に、サステナビリティという概念が登場するようになりました。

そしてサステナビリティという要素は、政府の政策課題としても位置付けられ、民間企業の努力目標として徐々に棚卸しされるようになりました。

では、なぜ「環境の保全」「持続可能な開発」(サステナビリティ)が同時に話されるようになったのでしょうか。

それは地球温暖化や自然破壊、野生生物の危機、廃棄物問題などの環境問題が、人口問題や食料問題、労働問題、教育格差、エネルギー格差などの社会問題と密接に関連しているからでした。

それまで、国連では「環境の保全」というテーマでは地球温暖化や自然破壊について議論したのですが、十分に事態を好転させることができませんでした。そこで注目されたのが、社会的問題として別々で議論されていた食料問題や労働問題でした。

例えばブラジル等で行われる焼き畑農業は、現地住民にとって生活の糧であり食料調達の手段でした。しかし、膨れ上がった人口を支えるために焼き畑農業を過度に行うことで土地の体力は極端に失われ、結果的に森林に回復不能なダメージを与える場合があります。

また、途上国が経済発展するためには様々な産業を成長させることが大切です。これは貧困や失業等の問題を解決するために必要な取り組みです。一方で産業を育成する過程で、森林や鉱山が開発され、工場が立ち並び、大気汚染物質を含んだ排ガスが工場が一定程度排出されます。ときに環境関連の法制度が十分に整備されないまま、経済発展に向けた大規模施策がスタートし、排ガス処理の不備が環境に大きなダメージを与えてしまうことがあります。

このように国によっては、食糧問題や労働問題の解決や経済発展を目指す中で環境の保全に大きな支障をきたしてしまう場合があります。しかし、環境の保全のために、全ての開発や経済発展を止めることはできません。

そこで、広く普及したのが「持続可能な開発」(サステナビリティ)であり、「環境の保全」とセットで国際社会や政策立案の議論に姿をあらわすようになりました。

地球サミットでは、各国政府やNGO団体等の代表者が上記のような共通認識のもとに議論し、地球規模の環境及び開発のシステムの一体性を保持する国際的合意に向けた作業を行いました。

その結果、サステナビリティを意識した「持続可能な開発のための人類の行動計画」(別称:アジェンダ21)が採択されました。また、この時に開始された気候変動枠組条約の署名は、後の京都議定書の策定や2020年のパリ協定に至る「気候変動に対する国際的な取り組み」の主流の原点となりました。

2020年のパリ協定は、米国政府がトランプ政権時代に脱退し、バイデン政権に移行した際に再び加入した協定としても知られています。

   

そして時代はMDGsを経て、SDGsに移る

ブラジルでの地球サミットを経て、サステナビリティは各国の政策課題として位置付けられましたが、天然資源の枯渇や地球温暖化、途上国の貧困はいよいよ深刻さを増していきました。

そこで2000年の国連ミレニアムサミットでは、SDGsの前身であるMDGs(ミレニアム開発目標)が採択されました。MDGsは途上国の社会開発を主たる目標としており、飢餓や絶対的貧困、環境問題の解決が掲げられました。

実際、1日数ドル以下の生活レベルにいる絶対的貧困層の数を半減させ、特にアフリカ地域において、衛生環境や医療体制を改善するなどMDGsは一定の成果を生みました。

ただ、MDGsは先進国から途上国に対する開発支援という色合いが強く、途上国の貧困に主に焦点があてられていました。とりわけ、先進国と途上国の双方が、同等の責任を持って地球規模の共通課題に取り組むことはできていませんでした。

そんななか、MDGsの達成目標年度である 2015 年に近づくにつれ、環境保全、天然資源の枯渇、グローバルサプライチェーンの持続可能性など国境を超えた共通課題の緊急性が高まりました。

そこで「開発課題を議論してきた MDGs を中心とする流れ」に、「サステナビリティ・持続可能な開発を議論してきた地球サミットの流れ」が統合され、新たな地球規模に対応するための枠組み策定が開始されました。

これがSDGsとその主要テーマであるサステナビリティが、国際社会の最重要課題になった瞬間でした。

では、SDGsやサステナビリティは企業経営にどのような影響を及ぼすでしょうか。その詳細について、第3章で詳しく解説します。

   

SDGsを意識した経営とは

様々な議論の積み重ねを経て、2016年からスタートしたSDGs。民間企業も2030年まで、このSDGsを意識した経営が求められます。

特に今後政府からは政策課題として、SDGsのサステナビリティを意識した施策が多く打ち出されることが予想されるので、しっかりと先回りした対策を行っていくことが肝要です。

しかし、「SDGsのどんな点に気をつけて経営に取り組めば良いのか」と疑問に思う方も多いでしょう。今回の記事では、これまでに紹介した国際社会の議論の流れを踏まえた上で、SDGsに関して押さえておくべき3つのポイントを解説します。

   

<経営者が押さえて置くべきSDGs の3つのポイント>

SDGsのPoint 1:開発という側面だけでなく、地球サミットで議論されてきた環境・社会・経済の3つの側面のバランスを重視し、開発目標に組み込んでいる点

SDGsのPoint 2:MDGs において重要な判断基準として扱われていた富・所得の増加だけでなく、サステナビリティや社会的正義などといった価値にも等しく重きを置いている点 

SDGsのPoint 3:SDGsの17つの目標すべてに共通する基本原則である“No one, left behind”(誰も置き去りにしない) を遵守していることを証明するために、ミクロレベルでのデータや指標の収集を行う点

次の章で、それぞれのPointに即した具体的なアクションプランを紹介します。

   

4. SDGsを意識した経営のアクションプラン

   

Point 1に対するアクションプラン1:ESG指標を意識した経営を推進する

SDGのPoint 1:開発という側面だけでなく、地球サミットで議論されてきた環境・社会・経済の3つの側面のバランスを重視し、開発目標に組み込んでいる点

企業活動で環境・社会・経済もバランス取るためには、ただ発展していくだけの事業経営ではなく、Environment (環境)Social (社会)Governance(企業統治)を意識した健全な経営体制の構築が求められます。

これらEnvironment (環境)、Social (社会)、Governance(企業統治)という3つの指標を略してESGと呼ぶことが近年は多いです。

ESGは近年は企業への投資指標にも活用されており、ESGを指標とした投資のことを「ESG投資」と呼びます。そのため、経営管理において企業の資金繰りを円滑に回していく中ためには、ESGという指標を社内的に意識することは必要不可欠です。

既に2015年から世界最大規模の年金基金ファンドの1つであるGPIF(日本国民年金ファンド)などでも、ESG投資が推進されています。GPIFでは、2015年の国連の責任投資原則(PRI)署名以降、ESG投資という投資軸を明確に設定し、ESG活動報告書を毎年公開しています。

PRIは「E」「S」「G」の3つに取り組む企業に対して積極的に投資することを目標に、2006年当時の国連事務次長コフィー・アナンによって提唱されました。さらに、2008年のリーマン・ショック後に資本市場で短期的な利益追求に対する批判が高まったこともPRIの署名機関増加につながり、2019年3月末時点で2400近い年金基金や運用会社などがPRIに署名しています。

21世紀において、ESGを意識した経営は企業のあり方として当たり前になりつつあります。また実利的な側面でいうと、PRIに署名した年金基金や運用会社の数が2400社を超えていることからも、企業がESG投資の動きに注意を払うべきであることは明らかです。

さらに、ESGは投資家からの資金調達だけでなく、一般消費者から企業に対するブランドイメージにも大きく影響するようになっています。そのため、ESGはブランド価値を高め、販売を促進するという文脈でも大変重要になっています。

では、実際にESGを社内で推進するためにはどうすれば良いでしょうか?

先の文章でも具体例として挙げたように、環境=省エネ・脱炭素、社会=女性社員の活躍・サプライチェーン、企業統治(コーポレート・ガバナンス)=財務監査の徹底・取締役会構成などがキーワードとして挙げられます。

省エネ・脱炭素やサプライチェーンの持続可能性確保については後のほうで解説し、ここではコーポレート・ガバナンスの強化策について紹介します。

   

コーポレート・ガバナンスを強化する

企業のコーポレート・ガバナンスを強化し、正常に機能できる仕組みを作るには、まず取締役会のダイバーシティを確保し、会社経営の風通しを良くすることが大切です。近年、日本でも取締役会における社外取締役の割合を増やし、かつ女性の役員の積極登用を推進している企業が少しずつ増えています。

取締役会のダイバーシティを確保することで、第三者の客観的な目線が経営にもたらされ、かつ現状ではマイノリティになりやすい女性の声を経営陣に届けることができます。これらの取り組みは、財務監査・経営管理の不正を事前に予防し、育休制度やハラスメント防止策の推進にも繋がります。

また、重要なのは経営陣と利害関係のない人物を社外取締役に置くことです。経営者の身内を取締役に置いたり、関係会社や取引先の人物を取締役においてもガバナンスが効いている状態とは言えません。

粉飾会計や営業上の不正慣行、セクシャルハラスメント・パワーハラスメント等は、一度報道されると企業ブランドを大きく傷つけ、不買運動や離職率の増加、行政処分など大きな経営リスクをもたらします。

従ってガバナンスを強化することで、適切に経営のリスクヘッジができ、かつ適切に取り組むことで企業ブランドの向上に大きく寄与します。

   

アクションプラン2:サステナブルな経営体制・エネルギー政策を推進する

SDGsのPoint 2:MDGs において重要な判断基準として扱われていた富・所得の増加だけでなく、サステナビリティや社会的正義などといった価値にも等しく重きを置いている点

企業経営におけるサステナビリティを確保するためには、エネルギー利用や商品の原材料調達・製造工程での環境への配慮が求められます。

近年、Point 2で言及したサステナビリティの推進は、企業経営上の努力義務になりつつあります。これに伴って、これまで企業が行ってきた利潤追求活動や従業員賃金・福祉の向上を目指すだけでは、十分な社会的評価を得られなくなるでしょう。

会社内部のアクターだけでなく、会社外部の株主や投資家、潜在的な消費者やサプライチェーンに連なる様々な関係者を意識することが求められます。さらに、社会の公器として売り手良し・買い手良し・世間良しを満たした「3方良し」の状態を達成することが、政府文書「SDGs経営ガイド」においても推奨されています。

そして、これら会社外部にいる幅広いステークホルダーが利益を享受できるような施策として、「エネルギー利用体制の見直し」「商品の原材料調達・製造工程における環境への配慮やサステナビリティの確保」などが挙げられます。

まず、社内のエネルギー利用体制の見直し策について解説します。ここに大きく関係しているのが、SDGsのGoal7「エネルギー」です。

SDGsのGoal7「Affordable and Clean Energy」は、日本政府の公式ホームページにおいては、「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」という言葉で目標が設定されています。

特に企業としては、Goal7の中で法人への政策・支援に影響しそうな指標を把握し、気を付けたいところです。

定量的な数値目標として各国政府の政策に影響を及ぼすことが予想されるのが、Goal7のターゲット2で言及されている「最終エネルギー消費量に占める再生可能エネルギー比率」とターゲット3で言及されている「一次エネルギー及びGDP単位当たりのエネルギー強度」です。

エネルギー強度とはエネルギー効率のことであり、電気効率の良い部品の普及・利用をすすめることでエネルギー効率を高めることができます。企業としては、再生可能エネルギーの推進によって脱炭素を進め、エネルギー効率を改善することで電気料金の削減にも大きく寄与し、販管費の抑制にも繋がります。

省エネ対策や電気料金削減の詳細については、以下の記事をご参照ください。
電気料金を”大幅削減”する5つの効果的なアプローチ | Leaner Magazine|リーナーマガジン

次に、「商品の原材料調達・製造工程における環境への配慮やサステナビリティの確保」についてはサプライチェーンと絡めて、アクションプラン3にて紹介させて頂きます。

   

アクションプラン3:企業のサプライチェーンマネジメントに、「環境・サステナビリティ」の視点を盛り込む

SDGsのPoint 3:SDGsの17つの目標すべてに共通する基本原則である“No one, left behind”(誰も置き去りにしない) を遵守していることを証明するために、ミクロレベルでのデータや指標の収集を行う点

SDGsの推進で掲げられているスローガン”No One, Left Behind”は、企業経営においても非常に重要になります。

企業活動やグローバルサプライチェーンマネジメントにおいては、最も弱い立場にある生産者・仲介業者を含め、全てのステークホルダーが平等に利益を得られていることに注意を払う必要があります。

特にここで意識したいのが、サプライチェーンマネジメントです。SDGsでは、企業内部の利益追求だけでなく、企業が属する様々なコミュニティやサプライチェーンに連なる生産者・仲介業者など幅広いステークホルダーに貢献できるような企業行動が求められます。

また、ここでの「貢献」という言葉の文脈には、金銭的な利益の享受だけでなく、環境保全や社会的正義の実践など幅広い意味での社会貢献が含まれます。従って、CSR(企業の社会的責任)部門の活動としてサプライチェーンのサステナビリティ向上に取り組んでいる企業も多いです。

なかでも、サプライチェーンのサステナビリティ向上を目指して行われているのが、フェアトレードやグリーン調達です。

フェアトレードとは、貿易等において値段の法外なつり上げや買いたたき、極端な中抜きが起きないよう心掛けながら、商品の売買を行うことを意味します。特にサプライチェーンにおいて立場が弱くなりやすい、一次生産者や労働者を保護する意味合いも含まれています。

日本ではコーヒーを数百円で購入し、板チョコレート1枚を100円前後で購入することができます。しかし、アフリカでコーヒー豆やカカオ豆の生産に従事する労働者が得られる取り分はそのうちのたった数パーセントに過ぎず、生活レベルも高くなく、結果として家計を支えるために児童労働を強いられる子供も少なくありません。

価格競争によって最終消費者が安く商品を得られることは喜ばしいですが、その副作用として農園等で肉体労働に従事する従業員が適正な賃金を払われていないのだとしたら、その歪んだ構造を是正することは、まさに企業の社会的責任(CSR)だと言えます。

またグリーン調達とは、環境マネジメント制度の良し悪しに基づいて、サプライヤー選定を行う調達方法です。具体的な実践方法としては、環境に配慮した製品が取得できるISO14001規格に基づいて優先的な取引権をサプライヤーに付与する取り組みが考えられます。

加えて、サプライチェーンの中で、製造の最終工程の担う立場にある企業として特に重視した方が良い国際指標としては「エコロジカル・フットプリント」や「カーボン・フットプリント」です。フットプリント(Foot Print)を日本語に直訳すると「足跡」という意味です。

具体的に、「エコロジカル・フットプリント」は、人間活動が環境に与える負荷を、食料・資源の生産および廃棄物の浄化に必要な陸域・海域の面積として示した数値です。また、「カーボン・フットプリント」は、商品やサービスが原料調達から廃棄までのライフサイクルの中で発生する二酸化炭素(CO2)の排出量を算出したものです。

現在、「エコロジカル・フットプリント」「カーボン・フットプリント」以外にも様々なフットプリントが計算・提案されており、人間活動・企業活動に対する環境アセスメントに利用され始めています。

脱炭素・サステナビリティ向上に向けた国際社会の取り組みにおいて、これらフットプリントの指標やフェアトレード・グリーン調達は、今後さらに重要性が増すことは間違いないでしょう。

    

5. 終わりに

今回の記事では、地球サミットを通じて形成された「持続可能な開発」に関する議論やMDGsの開発目標を追いながら、SDGs・サステナビリティの意味・目的を紐解きました。

そのうえで、企業経営の文脈で重視するべきSDGs・サステナビリティの要点を解説し、具体的なアクションプランをコーポレート・ガバナンスやエネルギー問題、サプライチェーンマネジメントの領域に落とし込んで紹介しました。

ぜひ、今回の記事が皆さんのSDGsを意識した経営の実践に役立てられたら幸いです。

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