2020.10.30
法人向け損害保険料の経費削減方法|コストの特徴から市場動向、具体的な削減アイデアまですべて解説
企業活動にはリスクがつきもの。地震・自動車事故・賠償請求・財物損壊・海難事故…など、いくつものリスクがつきまといます。
法人向け損害保険は、これらのリスクに対する備えとして、多くの企業に利用されています。安定した事業を営むために、損害保険はなくてはならないものと言ってよいでしょう。
一方、「念のために」と過剰な保険商品を購入してしまっていたり、価格の妥当性を適切に評価できていなかったりと、無駄な支出がかさみがちな費目でもあります。
実は、これらの無駄コストは減らすことが可能です。
本記事では、法人向け損害保険料の特徴や、具体的な削減方法などについて解説します。
TEXT BY Leaner Magazine編集部
法人向け損害保険料とはー費用の特徴
概要と市場動向
法人向けの損害保険は、自動車保険・自賠責保険・生産物賠償責任保険(PL保険)・損害賠償保険・海上保険など、複数の種類があります。企業の支出として計上される「損害保険料」は、これらすべてを合計した金額です。
日本の損害保険市場は400憶ドル(約4兆円程度)と推計されており、微増ながら拡大傾向。世界的にみると、米国、中国に次いで3番目に大きな市場です。ただし、GDP対比でみると0.8%程度の規模であり、先進各国に比べると低い水準にあるといわれています。
スイスリー社が発表している「日本の保険市場」レポートによれば、まだまだ成長の余地があると考えられている市場です。
国内損害保険市場全体のうち、約48%にあたる約2兆円が企業保険とされています。
このうち、34%(約7,000億円)を自動車保険が、20%(約4,000億円)を賠償責任保険が、18%(3,600億円)を財物保険が占め、その他さまざまな企業保険によって構成される費用です。自賠責保険(約1,200億円)や海上保険(約1,000億円)なども大きく、業種によっては多くの保険料を支払っているでしょう。
企業が支払う法人向け損害保険の料金は、実際に加入している保険料の合算によって求めることができます。非常にシンプルな費用構造です。
したがって、経費削減を実現するためには、保険種類ごとにそれぞれ削減アプローチをとる必要があります。
ただし、保険種類によって削減方法が大きく異なることはありません。基本的には、サプライヤーの切り替え・価格交渉によって最安購買をめざす「サプライヤーマネジメント」か、契約範囲などを見直すことによってむだを減らす「ユーザーマネジメント」が、効果的なアプローチになります。
法人向け損害保険料の削減方法
前章で述べた通り、法人向け損害保険料はサプライヤーマネジメントとユーザーマネジメントの2つの方法で削減できます。
サプライヤーマネジメント
法人向け損害保険料におけるサプライヤーマネジメントとは、共通の補償範囲で比較し、「最も安価なサプライヤーに切り替えること」です。
損害保険のサプライヤーは、大きく「保険会社」「保険代理店」「保険仲立人(ブローカー)」の3種が存在します。「一般社団法人 日本損害保険協会」がまとめた資料(2018年度末代理店統計)によると、国内における取扱高は代理店扱が91.4%と圧倒的に多く、次いで保険会社直扱が8.0%、 保険仲立人扱(ブローカー)が0.6%になっています。
このうち、どの種別の保険契約価格が高い・安いというのを、一概に判断するのは難しいと言わざるを得ません。
補償範囲を一律に揃えた上で、保険会社や保険代理店、ブローカーそれぞれに対して相見積もりを行うことで、より最適な条件を引き出すことをめざしましょう。
ユーザーマネジメント
法人向け保険料におけるユーザーマネジメントとは、補償対象や補償範囲を見直すことで、「過剰な保険契約を解約し、経費削減をめざす」ものです。
たとえばテナント保険であれば、補償対象の建屋を縮小したり、什器・備品を補償対象から外すといった判断ができるでしょう。あるいは、全額補償ではなく一定額を補償してくれるプランに見直すことも考えられます。
1つ気をつけたいのは、契約中の損害保険が「企業活動をする上で必要不可欠なもの」かどうかを見極めること。コストを減らしたいと考えても、事業上回避すべき大きな損害は損害保険の加入でカバーすべきでしょう。「過剰な保険契約がないかを見直し、経費削減の対象とする」という意識で取り組むのが重要です。
法人向け損害保険料削減のステップ
法人向け損害保険料は、以下の5つのステップに沿って進めるのが効果的です。
Step1.保険種別・補償内容などの情報を整理する
まずは、現在契約中の損害保険を洗い出し、それぞれ保険種別・補償内容といった情報を整理していきましょう。
企業の運用体制や損害保険の種別によりますが、日本では総務部・管理部といった部署が契約をとりまとめているケースが多いかもしれません。
また、拠点・事業部の単位で個別の保険契約を締結している可能性もあります。まずはこれらの情報をかき集め、集約することをめざします。
こうすることで、社内の損害保険契約の全体像を把握できるだけでなく、より安価なサプライヤーや不要な保険契約の存在に気づくことができます。これらは、後に経費削減プランを検討する際のヒントになるでしょう。
Step2.補償対象/補償範囲の見直し
契約中の損害保険内容は適切でしょうか?無駄なコストが見られるのは、主に補償対象が広すぎるケースや、過度な補償がついてしまっているケースです。
このようなケースがないか、契約内容を1つ1つ確認していきましょう。また、見直しの対象となりそうな契約については、現場社員など関連するステークホルダーに対して聴きとりを行う必要があります。これらの情報を元に、見直し候補となる保険契約をリストアップしましょう。
Step3.条件を揃えて相見積もりを実施
次に、サプライヤーマネジメントによる経費削減を目指しましょう。1年以上契約が見直されていない保険や、支払額が一定以上を越える(≒削減インパクトの大きい)保険契約について、相見積もりをとることで削減余地がないか検証します。また、Step2で見直し対象にあがった保険契約についても、併せて見積もりを取得し、より有利な契約条件の獲得を目指します。
見積もりを依頼する際は、以下の情報を提供する必要があります。
- 保険証券
- 事故データ、保険金の支払いデータ
相見積もりは、「保険会社」「保険代理店」「保険仲立人(ブローカー)」それぞれのサプライヤーに対してモレなく取得することで、より安価な見積もりを獲得できる可能性が高まります。
注意点として、見積もりはできるだけ同一の条件で取得するようにしましょう。補償の対象範囲・保険金額といった補償内容を揃えることで、サプライヤーごとの横比較が可能になります。
Step4.価格交渉を行い、安価な契約に切り替え
価格交渉は、1社あたり2〜3回程度、他事業者への切り替えを示唆しつつ行うことが効果的です。Step3で、各事業者に対し抜け漏れなく見積もりをとることにより、より価格交渉をしやすくなります。
参考:https://mag.leaner.jp/posts/819/
安価な契約条件を獲得できたら、社内のステークホルダー(おそらく法務部門への確認も必要になります)に確認をとり、契約の切り替えを行います。
Step5.定期的に見直し
定期的に契約条件・補償内容の見直しを行うことも大切です。法人向け損害保険業界は成長中の市場であり、新たなサプライヤーや保険商品が生まれる機会があります。
1年ごとなど、しかるべきタイミングでこれらをリサーチし、見直しをかけることで、適正な保険契約を維持できるでしょう。
法人向け損害保険の具体的なサプライヤー
ご説明してきた通り、法人向け損害保険の提供会社は「保険会社」「保険代理店」「保険仲立人(ブローカー)」の3つに大別することができます。ここでは、それぞれの主要なサプライヤーを紹介します。
保険会社
保険会社とは、損害保険商品を開発・提供する企業のことです。あらゆるリスクに備えた総合型の保険会社から、特定の損害リスクに備えた保険商品を扱う特化型の保険会社など、複数のサプライヤーが存在します。
本記事では、総合型大手保険会社を5社紹介します。詳細は各社ホームページをご確認ください。
保険代理店
保険代理店とは、保険会社と販売代理契約を結び、保険商品販売を営む事業者のことです。
現在、国内に18万店(内、10万が法人代理店)以上あるともいわれており、多くのプレイヤーが乱立しているのが特徴です。ただし、代理店数は減少傾向で、集約が進んでいます。
本記事では、代表的な大手保険会社を2社紹介します。詳細は各社ホームページをご確認ください。
保険仲立人(ブローカー)
保険仲立人(ブローカー)とは、保険契約者の委託を受け、契約者に最適な保険契約の提案・仲介する事業者のことです。欧米では保険手配の中心的な存在といわれています。
保険代理店との違いを図で表すと、以下のようになります。
保険会社の委託を受けていないため、構造的により加入者に合った保険提案をしやすい特徴があると言われています。
本記事では、保険仲立人事業を扱う企業を紹介します。詳細はホームページをご確認ください。
終わりに
法人向け損害保険料について、経費の特徴や市場動向、削減ノウハウや具体的なサプライヤーに至るまで、幅広くご紹介してきました。
損害保険は、一概に値段が下がればよいというものではありません。「企業活動におけるリスクを適切にマネジメントするため、しかるべき補償を適切な条件で享受すること」こそが重要なのです。
本記事を参考に、1度契約内容やコスト状況を見直してみてはいかがでしょうか。
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