2019.12.19
上場関連印刷費用のコスト削減とは?プロネクサスと宝印刷、業者の比較まで
突然ですが、みなさんは、自社のディスクロージャー印刷費用がどのくらいなのかわかりますか?ディスクロージャー費は着目したことがあっても、ディスクロージャー印刷費としては注目していない人がほとんどでしょう。ディスクロージャー印刷費を見直すだけで、年間約30%のコスト削減を達成した企業もあります。
この機会に、ディスクロージャーの費用を見直してみてはいかがでしょうか?
記事では、「ディスクロージャー費の削減」を実現する方法を解説します。
TEXT BY Leaner Magazine編集部
なぜディスクロージャー費は見過ごされているのか?
ディスクロージャー費は、上場企業に提出が義務付けられている有価証券報告書や四半期報告書などの必要書類やIR関連の開示の際生じるコストです。定期的にかかる経費であるにも関わらず、見過ごされている理由は2つあります。
- 削減余地がどこにあるのかわからないから
ディスクロージャーを委託する際、内容が不明確のまま、報告書の作成を依頼してしまいがちです。削減余地を理解するためには、書類の作成から財務局・取引所に提出されるまでの工程で、どのように費用が発生するのかを正確に把握することが重要です。
- 印刷会社との契約が更新されにくいから
ディスクロージャーは企業が信頼性を構築する上で、極めて重要な業務です。そのため、一度印刷会社に作成・印刷を依頼すると、スムーズな業務委託の乗り換えができないことを懸念し、契約条件を再考するケースは多くありません。結果的にディスクロージャー費用の契約更新がされずに、自社の費用が相場より高すぎる条件になっている可能性があります。
ディスクロージャー費はどのように計算したらいいの?
自社でコスト削減に取り組んでみようと思ったら、まずは、どのようにディスクロージャーのコストが決まるのかを実際に計算してみるところから始めましょう。
必要書類の提出の際にかかるコストは、主に4つに分けられます。
- 有価証券報告書・四半期報告書の作成費
有価証券報告書・四半期報告書の作成は、書類が複雑で専門性が高いため自社内で作成することが難しい業務です。ほとんどの場合、ディスクロージャーに特化した印刷業者が作成からサポートしています。費用は、「報告書の作成頁数」と「頁数あたりの単価」、「打ち合わせ費用」の合計によって決定されます。頁数あたりの単価はサプライヤーにより異なるので削減が可能です。また、打ち合わせ費用も打ち合わせの回数を減らすことで、削減が可能となります。
「報告書の作成頁数」×「頁数あたりの単価」+「打ち合わせ費用」
- 有価証券報告書・四半期報告書の印刷費
作成した報告書を配布するための印刷費です。印刷費の計算方法は以下になります。
「一枚あたりの単価」×「報告書の作成枚数(部数・頁数)」
作成枚数は配布数が決まっているため削減が困難である一方、一枚あたりの単価は、利用する印刷会社・交渉状況・紙の種類等により削減が可能です。
- システム利用料
報告書作成には、企業内の会計情報やExcel基礎データを管理・整理することが必要です。また、近年オンラインでのIR情報開示や、EDINETでの報告書提出需要の増加で、様々なWeb IRサービスが市場に出ています。データ処理を行うシステムやWeb IRサービスの利用料は全てシステム利用料に分類されます。利用する契約会社やサービスにより価格が異なるので、比較することでコスト削減余地が有ります。
- その他
株主総会の招集通知・決議通知の発送実費などの細かな費用です。
ディスクロージャー費を削減する2つのアイデア
4つの価格構造やそれぞれの削減余地はお分かりいただけたでしょうか?
では、ディスクロージャー費を削減する2つのアイデアをご紹介しましょう。
- 印刷費に着目する
- 定期的な相見積もり・価格交渉
印刷費に着目する
1つ目のアイデアは「ディスクロージャー印刷費に着目する」です。
ディスクロージャー費用を削減するために、なぜ特に印刷費に注目しなければいけないのでしょうか?2つの視点から印刷費が削減可能だと言えます。
- 現状の印刷動向
ディスクロージャー印刷費は近年、ディスクロージャー関連会社の中で競争が激化しており、単価が下落傾向にあります。つまり、現状の印刷費よりも少なくなる可能性が高いです。
- 印刷費が及ぼす影響
会社にとって重要な業務であるディスクロージャー自体に見込まれる影響が少なく、低リスクで削減が可能な分野です。ディスクロージャーのコスト削減を考える上で、まずは取り組みやすい品目の一つです。また、印刷費だけを切り出して依頼することが可能なので、比較的取り組みやすいです。
定期的な相見積もり・価格交渉
2つ目のアイデアは、定期的な相見積もり・価格交渉です。
相見積もりは、契約条件を交渉する際に有効なプロセスです。比較購買を定期的に行うことで、現在の価格よりも良い条件を獲得できる可能性があります。相見積もりで注意すべきステップは以下の2つです。
- 現状のディスクロージャー費の可視化
- 各種条件のチェック
①自社のディスクロージャー費の可視化
まずは、相見積もり・価格交渉に向けて、現状自社で支出しているディスクロージャー費用と業務委託内容の内訳を把握しましょう。
具体的には、開示書類作成・原稿のチェック・印刷・Web公開・翻訳などがあります。これらの項目を設けた後、実際に支出金額を査定していきます。
業務内容の内訳を知り、何の業務をいくらで委託しているかを把握しておくことで、項目ごとの比較が可能になります。結果的に、明確にコスト削減できる項目を可視化でき、自社に必要・不必要な業務が見積もりに入っていることの可否を確認することができます。
例えば、招集通知の印刷を委託する場合、カラー印刷を無料で対応してくれる業者もいれば、追加料金が必要な業者もあります。予期せぬ追加料金が必要になった場合、追加料金だけではなく、価格交渉のための新たな打ち合わせ費用もかかるので、注意が必要です。
きちんと内訳を明確化しておくことでコスト削減の余地を可視化し、予想外の支出を防ぐことができます。内訳を前もって一つ一つチェックしましょう。
②選定条件のチェック
コスト削減余地が可視化されたら、次はサプライヤーの選定条件を検討しましょう。
選定条件は、価格はもちろん、品質、納期など様々です。特にディスクロージャー及びIR関連書類の印刷は、納期を守ることが会社の信用性に大きく関わります。想定している納期通りに納品が可能な業者かどうかを必ず確認しましょう。
主要なサプライヤー比較
最後に主要なサプライヤーを比較してみましょう。
現状では、専門性や正確性が要求される分野であるため「プロネクサス」と「宝印刷」の2社が寡占状態になっています。両社ともに、開示業務支援システムを用いた印刷を提供しています。大手2メーカーの特徴を見てみましょう。
プロネクサス
- 法定書類の国内シェア率約60%
2018年3月時点で、有価証券報告書・株主総会の招集通知いずれかを2233社と取引している。リピート率も高く、96%以上がサービスを継続している。
- 新規上場企業の「上場申請書類」作成も行っており、上場時点での依頼も可能
- 「J-REIT」や「投資信託」等の金融商品ディスクロージャーにも注力
宝印刷
- 法定書類の国内シェア率約40%
2018年の時点で1962社と取引を行っている。
- 「TOKYO PRO MARKET」の上場審査を行なう「J-Adviser」資格を取得するなど、コンサルティングサービスを強化している。