2020.12.10
工場・プラントのランニングコストとは?省エネ対策や特徴、設備費・警備費や保険料の削減事例・アイデアを徹底解説
工場・プラントは企業の持つ大規模設備であり、ランニングコストが大きいです。工場を操業する際には、設備費として莫大なガス代、水道料金、電力コストがかかります。警備費用や各種保険料も無視できません。
今回の記事では、工場・プラントのランニングコストに焦点を当てながら、具体的な省エネ・コスト削減方法について解説します。
TEXT BY Leaner Magazine編集部
工場・プラントのランニングコスト・イニシャルコストとは?
工場・プラントにかかるコストは「イニシャルコスト」と「ランニングコスト」の2つに分けることができます。
イニシャルコストは、工場・プラントを建てる際の初期費用や機械・生産システムへの設備投資が該当します。一方、ランニングコストは日々の操業に掛かる水道光熱費や常駐警備費用、機械等のメンテナンス費用を指し、オペレーティングコストとも呼ばれます。
特にランニングコストは継続して発生するコストであり、積み重なると大きな金額になることも多いです。例えば、工場・プラントでの1日の水道光熱費用を数パーセント削減しただけで、「年間の操業日数」 x 「工場数」分だけコストが減り、結果的に莫大なコスト削減効果を生みます。
工場・プラントのコスト削減で取り組むべき6つのランニングコスト
今回は工場・プラントに関連したランニングコストの中でも、特に削減余地の大きい以下の6つの項目について削減策を解説します。
- 電気費用
- ガス費用
- 水道費用
- 警備費用
- 保険費用
ランニングコスト①電気費用の省エネ・コスト削減策
電気代は、「基本料金」「電力量料金」「再生可能エネルギー発電促進賦課金」の合計として算出されます。特に工場のコスト削減においておすすめなコスト削減策が以下の2つの削減策です。
- 省エネ照明・高効率機器に切り替える
- 法人向け電気料金比較サービス(代理店)の利用
省エネ照明・高効率機器に切り替える
長年操業されている工場・プラントでは、いままでの照明に白熱電球や蛍光灯を利用している場合があります。しかし、これらをLEDランプに切り替えることで大きなコスト削減を見込むことができます。
特にLEDランプは白熱電球の約40倍の寿命があり、消費電力を8割ほど節約することができます。LEDランプは白熱電球に比べると価格が高いため、初期の設備投資費用は高くなりますが、長期的に大きなコスト削減効果を得ることができます。
株式会社ローソンの店舗での成功事例となりますが、2008年2月から42店舗にLED店内照明を導入したことで、店舗全体の消費電力量を5.4%削減することに成功しています。
【従来の蛍光灯と比較した1店舗当たりの削減効果≪月当たり≫】
店内照明:約33%の電力使用料削減率/266kgのCO2削減量
店舗看板(ラインサイン):約52%の電気使用量削減率/50kgのCO2削減量
合計:約35%の電力消費削減/316kgのCO2削減量
法人向け電気料金比較サービス(代理店)の利用
近年の電力自由化に伴い、様々な企業が電気サービスを提供するようになりました。こうした中でおすすめなのが、法人の電気料金比較サービスの利用して、電気代を削減する方法です。
法人向け電気料金比較サービスでお勧めなのが、エネオク、エネチェンジ、法人電力.comの3社です。
例えばエネオクでは、全国の小売電気事業者から最安の電力契約を見つけられるオークション型仲介サービスを提供しています。また、エネチェンジではコンサルタントのサポート下で主要電力サービスの一括見積もりを行うことができます。
さらに、法人電気.comでは地域ごとの電力料金比較が可能であり、エネルギー使用量の見える化・最適制御を行える「エネルギーマネジメントシステム」も提供しています。
エネオク、エネチェンジ、法人電力.comの詳細なサービス比較については、以下の記事を参照ください。また、上記の方法以外にも省エネ補助金・助成金の活用で電気代を削減する方法なども紹介しています。
電気料金を”大幅削減”する5つの効果的なアプローチ | Leaner Magazine|リーナーマガジン
ランニングコスト②ガス代の省エネ・コスト削減策
法人向けガスは、2000年代頃から大規模工場・プラントや医療施設を対象に、販売の自由化・規制緩和がなされています。商社やエネルギー企業各社が新規参入したことで、市場競争が促進され、価格の低下や各種オプションの充実が図られています。
サービスを提供するサプライヤーが増加したことで、買い手市場化が進んでおり、プランの見直し・価格交渉のハードルも低くなっています。また電気とガスのセット契約も増加しているため、まだ見直されていない企業にとっては、ぜひコスト削減を実践したい費用項目です。
ランニングコスト③水道料金の省エネ・コスト削減策
工場・プラントの水道使用料金を削減する方法として「自家水道システム」と「節水機器」の2点を導入するアイデアがあげられます。自家水道システムとは、上水道を利用するのではなく地下水や余剰工業用水を利用してシステムのことです。工場の立地に左右されますが、大規模な水量を利用する工場に適した削減策です。
また、節約機器の利用も簡単な節水手段になります。現在使用している水道蛇口部分に、節水用の弁を付けることで実現します。水道蛇口の開度を調節することで、数%程度の節水を達成することができます。
詳細についてはこちらを参照してください。
会社の水道光熱費を節約するには?効果的な経費削減方法を紹介 | Leaner Magazine|リーナーマガジン
ランニングコスト④警備費用のコスト削減策
工場・プラントの警備費用は「機械警備費用」と「常駐警備費用」の2つに分けられます。
常駐警備は、警備員による巡回や設備点検業務が含まれています。一方、機械警備はセンサーや監視カメラによる自動セキュリティシステムを指します。
特に機械警備の市場は、拡大傾向にあります。工場・プラントや大規模商業施設などに対して、サービスを提供するサプライヤーが増えており、競争が激化しています。そのため、価格交渉や相見積もりを通じたコスト削減が見込めます。
例えば人間による警備に頼っていた企業では、機械警備を拡充することでコストを下げることが可能です。工場・プラントの警備を行う上でカギとなるのが、警備員の「配置ポスト」です。機械警備を導入することで、「配置ポスト」を削減し、機械による監視で代替することができます。
中でも、工場・プラントの拠点数が多い企業ほど機械警備の利用がおすすめです。常駐警備費用は工場・プラントの拠点数に比例して増加します。しかし機械警備費用の場合、拠点数が大きいほどバイイングパワー(購買力)が強くなり、値下げ交渉に有利になります。
この値下げ余地の差は、常駐警備費用と機械警備費用のコストの違いに起因しています。常駐警備費用は人件費がメインなので、単価を下げることが難しいです。一方で、機械警備費用は、初期費用をのぞくと「拠点数」と「拠点単価」の掛け算で算出されます。そして、機械警備サービスの利用料である「拠点単価」の適正価格は、近年の価格競争の影響で緩やかに下がっています。
機械警備を導入する場合、設備投資として一定程度の初期費用が掛かりますが、長期的には工場のオペレーティングコストを削減する効果があると言えるでしょう。
ランニングコスト⑤保険費用のコスト削減策
工場・プラントは企業が大きな投資を行って建てた資産であり、有事に備えてしっかりと保険をかけることが大事です。法人向け損害保険の料金は、実際に加入している保険料の合算であり、削減をする際にはそれぞれの保険ごとに見直しをすることになります。
特に工場・プラントが加入する保険で大きいのが、火災保険や地震保険になります。契約の細かい内容の見直しは個々に行いますが、コスト削減に向けたアプローチは以下の2つになります。
- サプライヤーマネジメント:サプライヤーの切り替え・価格交渉によって最安購買をめざす
- ユーザーマネジメント:契約範囲などを見直すことによってむだを減らす
サプライヤーマネジメント
サプライヤーマネジメントを行う際、保険内容を変更する予定がない場合は、従来の契約を前提として適正価格に価格交渉することが大事です。その上で、他の保険会社とも価格交渉を行い、最も自社の条件に見合った契約を選択します。
また複数の保険会社とそれぞれ異なる契約を結んでいる場合、それらを集約することで総保険料をコスト削減できる可能性があります。工場・プラントの拠点ごと、もしくは会社ごとに異なるサプライヤと契約している場合、契約単位をまとめることでスケールメリットを用いて価格交渉に臨むことができるため、保険料を引き下げることが可能です。
ユーザーマネジメント
社内での契約範囲を見直すユーザーマネジメントの場合、長期契約への切り替えを検討することがおすすめです。単年契約から複数年契約へと切り替えることで、費用の低減を図ることができます。
この際、「補償対象」と「補償内容」の2ポイントを押さえて見直すことが求められます。工場・プラントは年ごとに設備投資や区画整理によって、物理環境に変化があるため、定期的に契約の内容を見直すことで削減余地を見つけることができます。
法人向け損害保険料の経費削減方法|コストの特徴から市場動向、具体的な削減アイデアまですべて解説 | Leaner Magazine|リーナーマガジン
終わりに
工場・プラントは製造業にとって、製品を作るための根幹となる大規模設備です。しかし、操業にかかるランニングコストを管理できなかった場合、大きなコストを発生させてしまいます。多様な製造のあり方が普及する中で、改めて自社の工場がコスト最適化されているかどうかを見直すことは、非常に重要だと言えるでしょう。
企業によっては、工場・プラントのランニングコスト見直したことで、経常利益を確保することができた例もあります。是非この記事を機に、今一度、工場・プラントの支出を見直されてはいかがでしょうか。
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